道新文化センターの講座「身近な都市秘境を歩いてみよう」を受け持っていて、長いこと続けていると未訪問の見学先を見つけ出してくるのに苦労する。「秘境」の言葉を冠しているけれど、人跡未踏の意味の秘境ではなく、一般市民が足を踏み入れることの少ない都会の中の場所、といった程度の定義である。
この定義なら、北大の研究室ならどこでも都市秘境になりそうである。そこで顔見知りの先生達に研究室や施設の見学をお願いしている。北大も組織や機構改革でどんどん新しい大学院や研究機構ができている。10年前(2004年)に公共政策大学院と共に法科大学院、会計大学院が北大にも設置されていている。以前の学部と大学院が一体化した大学組織から見ると、秘境的大学院に見えなくもない。
北大の公共政策大学院副院長の石井吉春教授と朝食会を介して顔見知りであったので、前述の都市秘境巡り講座の2014年春コースでの見学をお願いしていた。その石井先生にクラーク会館でばったり出会ったので、その場で石井先生の教授室でパノラマ写真撮影と簡単なインタビューをさせてもらう。
石井先生の部屋に入って意外だったのは、室内がすっきりと片付いている事である。大学の教授室は押しなべて本や資料、理系では実験器具や用具、なかには趣味に使う道具と、乱雑と表現してもよい雰囲気にある。石井先生は実務を教えるということで銀行から転身してこられたので、銀行時代の整理整頓の習慣が身についているせいかと推測してみる。
石井先生は1954年生まれの仙台市出身である。大学は一橋大学商学部を卒業し、1976年北海道東北開発公庫(現日本政策投資銀行)に入庫している。日本政策投資銀行の四国支店長から2005年北大の教授として赴任した。北海道との縁は1998年に小樽商科大学非常勤講師、2001年旭川大学非常勤講師、2002年北大大学院非常勤講師と続いていて、最終的に北大人として勤務することになった。
講義や研究テーマは地域財政金融論に関わるものである。大学院の名前の通り修士生を教えている。しかし、理工系の修士課程の学生のように、研究室に属して修士論文を書き上げることで修士号を取得するのとはかなり異なる修士課程のようである。学生が研究室に属することはなく、修士論文を書く必要もないらしい。学生が履修した専門を尋ねられることがあるけれど、ここの大学院修了生は大学院に進学する前の学部の専門を挙げるそうである。確かに、公共政策学といっても他の人には漠然とした学問である。
実務を教える立場での石井先生の話は、現場の地方公務員や首長に即役立つもののようである。各種の学外の委員会の委員を務め、インタビューを受け、提言を行って、精力的に学外に発言しているのを新聞、雑誌でみている。平成の大合併に関する先生のインタビュー記事を読むと、地方自治の問題点が見えてきて、なるほどと思う。
仕事の他に好きでやっている事なども聞いてみる。テニスを週1回ほど楽しんでいるとのことで、自分で行うスポーツが好きなようである。頂いた名刺には高知県観光特使と刷られていて、こちらは趣味というより仕事の延長のものであろう。
(北大公共政策大学院教授室での石井吉春教授、2014・5・12)
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