IT業界は日進月歩の技術革新で、企業の浮き沈みが激しい。企業寿命30年説はこの業界では特に異を唱える話でもない。むしろ、30年も生き延びる企業は珍しいかもしれない。中村真規氏がオーナー社長である「デジック」は、その前身時代から数えて30年以上経っている。
筆者は「知識情報処理研究振興会」を組織していた頃があって、同会で「北海道ベンチュアランド企業群」という、北海道のIT企業紹介本を1984年に刊行している。あれから30年経って、本に収録している企業や経営者で、現在も続いて仕事をしているのはわずかである。
業界団体もしかりである。同書に名前を連ねている「北海道マイクロコンピュータシステム工業会」(代表幹事 故北島健一氏)、「北海道ソフトウエア事業協同組合」(理事長 川端貞夫)、北海道ソフトウェア協会(会長 故小林英愛氏)は今は無い。
中村氏の会社は同書には「NC情報処理(株)」で紹介されている。NCの名前がついているのでNumerical Controlの連想で、そのような業種に関連する会社かと当時思っていた。今回、中村氏のインタビューで、氏の改名以前の名前「中村力」の頭文字であると聞いて、そうだったのかという思いである。中村氏は2001年に「真規(まさき)」と改名して、会社の名前も「デジック」に変えている。
中村氏は1947年生まれで、青山学院大学経営学部を卒業し、日本ユニシス(旧バローズ)勤務を経て札幌で起業している。現在の会社は運輸や通信の管理システムの開発を行っている。仕事の9割方は東京からのものである。東京の企業が中国などに仕事を発注するオフショアに対して、北海道の人件費が中国よりは高くても、東京よりは低めの優位性を生かしたニアショアでやっているとのことである。中国のオフショアに対する北海道のニアショアの売り込みの決め台詞は、北海道は「反日的ではない」との冗談が飛び出す。
海外はロシアのウラジオストックで企業連携を行っているとのことである。札幌のIT産業を1兆円の大台に乗せるには、技術者をはじめとする人材を集める必要があるとの持論である。人材養成にも関連して、京都情報大学院大学のサテライト教室を同社内に設けて、自ら同校の教授も務めてている。講義科目を聞くと「IT企業実践論」と答えが返ってくる。
北海道IT推進協議会の会長を務めたことがあり、現在は北海道情報システム産業協会の会長や北海道コンピュータ関連産業健康保険組合の理事長、その他の団体の役職に就いている。ご本人言では、組織を作るのが好きだとのことである。
組織作りは趣味には入らないと思うので、改めて趣味は何かと質問すると、カメラと写真撮影かな、との答えである。かなり以前の話になるけれど、中村氏は料理屋も経営していたことがあった。ITと料理屋が結びつかないので質問してみると、自分の好きな物を食べさせてくれる店を探していて、いっそのこと自分で作ってしまえ、と始めたとのことである。この店は今は無い。
北海道ソフトウェア協会があった頃、会長の小林英愛(ひでちか)氏と副会長の中村氏のコンビが長く続いた。小林氏はワインに凝っていて、ソムリエの資格を持っていたはずである。小林氏が、自分はソムリエではなく「ノムリエ」であると言っていたのを記憶に留めている。その小林氏も今は故人である。
(デジック社長室での中村真規氏、2014・2・25)
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