太田明子さんは「私設北海道開拓使の会」事務局長や「札幌BizCafe」事務局長を歴任されている事もあり、旧知である。しかし、ここ数年は会う機会も無いと思っていたら、最近自転車製造と販売を行っていると小耳に挟んだので、時間を合わせパノラマ写真取材に出向く。場所は新車モデルのSapporoBikeが展示されている東急ハンズである。
太田さんは大阪市生まれで、名古屋女子大学短期大学部を1983年に卒業して伊藤萬に入社し、1993年に北海道に移住している。札幌を活動の舞台にして前記の仕事に携わり、2002年には「太田明子ビジネス工房」を立ち上げている。女性起業家支援の仕事などで講演のため全道を回った経験の持ち主である。蛇足ながら、出身地の関係で阪神タイガーズの熱烈ファンである。このような経歴で、何で自転車に関わるようになったのか聞いてみる。
太田さんはここ3年ばかり変形性股関節症で入退院を繰り返してきた。この病気は女性に多い疾患で、先天性のものであるらしい。病状が悪化すると、股関節の痛みで歩くのがままならなくなる。大学病院で手術とリハビリを終え、股関節に負担がかからないようにと自転車を利用するようになる。嘘みたい話であるけれど、自転車の振動で患部の軟骨組織が増えている珍しいケースだと、かかりつけの医者から言われたそうである。
病気から健常者の生活戻るための自転車利用で、自転車がママチャリに代表される低価格の実用車と機能性とデザインを重視した高価格のロードバイクの二極化に気付く。太田さんはこの二極化にあって、その中間の自分に合った自転車作りを考えた。考えるだけでなく、自転車のメーカーとなり販売を行ってみようとしたところに、これまで女性起業家に指南してきた事を自ら実践することになる。価格が手ごろで、機能性とデザインに満足でき、都市生活者の足として愛用できるものを試作する。価格は3万円台(約4万円)で、100台限定販売で、販売に先立ち東急ハンズにデモ車を展示している。
東急ハンズの売り場担当者に頼んで、デモ車を店の前に置き、太田さんに立ってもらいパノラマ写真撮影を行う。宣伝のパネルも一緒に並べての撮影である。店に出入りする客が写らないようにするため、手早く撮影を済ませる。
東急ハンズにデモ車を展示できたのがラッキーで、インタビュー時には約6割の注文が来ているとの事である。この分では完売の見込みは出てきたようである。新しい商品を開発・販売する苦労話もインタビューの節々に語られる。これまでの仕事の人脈を生かしてプロジェクトのメンバーに多方面の人に加わってもらっており、プロジェクト成功への原動力になっている。病気を逆手にとって、自転車と二人三脚で、女性起業家の道を走り続けている。
(東急ハンズ前で 2014.7.10)
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